2017年10月15日
イトログ

 

『その土地の人』

 

今日、こんちゃんがオーストラリアに向けて長崎を発った。

昨年から目標にしていたメルボルンでのワーキングホリデー。情報収集や実際に現地を下見をしながら少しずつ準備をすすめていた。

 

「いつでも帰っておいで」と、たくさんの人に優しい声をかけてもらったそう。

僕はそう言いませんでした。僕は僕の立場から、違った気持ちで送り出したから。

 

これから1年間、彼女にはオーストラリア人として暮らしてもらいたい。その間、彼女の帰る場所はオーストラリアであってほしい。

その土地に住み、その土地のものを食べ、その土地の空気を吸って暮らす。その先にようやく理解できるその土地の文化があるはず。

 

僕は、自分の意思で行動した彼女の仲間であることをとても誇りに感じている。

1年間、向こうの風を纏いながら楽しんでくれたら。

 

 

2017年3月23日
イトログ

『今年もここへ』

 

僕は今、ニカラグアにいる。

毎年恒例となったコーヒー豆の買い付けのためで、長崎を離れてから25時間ほど。ようやく空港前のホテルにチェックインした。

 

飛行機の中では見事な夕陽を楽しませてくれた空も、先ほどから雨となり、それに応じるようにけたたましく鳴っていたホテルのバーの音楽もぴたりと止んだ。

今はただ、屋根を叩く雨の音と、チッチッと鳴くトカゲの鳴き声だけが静かな部屋に響いている。

 

本来ニカラグアではこの時期は乾季なので雨が降ることは稀なのだが、コーヒー農家さんからの前情報で今年は雨が多いと聞いていた。

もちろん、コーヒー栽培にも影響が出ているが、品質が落ちているということはないそうだ。

 

例年であればグループで訪問していた産地買い付けも、今年は僕ひとりできている。

今回の旅は僕自身の経験や考え方にも大きく影響するだろうし、わざわざひとりを案内してくれる農家さんたちにも感謝の気持ちでいっぱいだ。

そんな意味では、どこか初めてこの場所に来たような興奮と不安が入り混じった気持ちでこのブログを書いている。

 

明日からは農園訪問やカッピングが始まる。

雨が降らないことを願いつつ、今回の中米出張が始まった。

 

 

2017年1月2日
イトログ

『2016年の終わりに思うこと』

 

今年が始まるとき、とある友人の勧めで、《あっという間》という言葉を使わない一年にしようと心に決めていた。

物事を消化的に過ごしたとき、その終わりに《あっという間》という言葉が口をついて出てくるのだと教わった。

 

その気持ちを胸に2016年を過ごしてみて、やっぱり僕には《あっという間》という言葉がお似合いなのだと感じている。

どんなに密度の高い充実した日々を過ごしても、どんなに一つ一つの小さな物事に強く集中しても、やっぱり僕にはあっという間に感じられてしまうようだ。

 

そんなあっという間の2016年でも、とりわけ大きなイベントだったのが【カリオモンズコーヒー大村のオープン】だろう。

 

これまでひとつだった仕事場がふたつになり、ひとつ屋根の下で働いていたチームが別々の場所で働くことになった。

この別々の場所で、、というのがこれまで僕が店舗を増やさなかった理由で、お店というものはブランドでも味でもなく、人で動いているということを強く意識しているからこそ、これまで店舗を増やすという選択肢を選んでこなかった。(もちろんブランドも味も大切なのだけれど)

 

けれども幸いなことに人には人一倍恵まれ、立場関係なく信頼し合えるチームが集まったことで、背中を押されるようにカリオモンズコーヒー大村が立ち上がった。

オープンして5ヶ月。徐々に認知度も上がり、長崎と大村との文化や消費の違いにも対応しながら少しずつでも根ざしていけるよう努めている。

それぞれの店舗にも頼もしいリーダーが育ち、『組織』としての歩みも始めている。カリオモンズコーヒーはすでに次のステージにあって、店主だった僕自身もそれに合わせた動きの取り方が必要な時期にきている。

 

 

2017年はどんな一年になるのだろう。

 

たくさんの出来事が僕の身に起こり、また、たくさんの困難が僕を待っている。

それらを乗り越えたとき、ちょうど1年後くらいに《あっという間》という言葉がぽろりと出てくれば、それは素晴らしい一年を過ごした証拠になるのだろう。

 

2016年の一年間で僕はそれを学んだ。

 

来年もまた《あっという間》になるような一年を楽しみたいと思う。

 

※この記事は2016年12月末に書かれた記事です。

 

 

2016年12月2日
イトログ

 

『ここは、ここ』

 

時折聞かれることがある。

 

「どうして長崎でやっているんですか?」だったり、「長崎を出る予定はないんですか?」だったり、場所に関する質問だ。

自分なりに噛み砕いて理解するところ、つまりは「なんで長崎みたいな田舎で、、」といったニュアンスだろう。

 

先に結論を言うと、出るつもりもないし、出ないつもりもない。

 

中には遠方から通って来てくれていて、もっと身近にカリオモンズのコーヒーを楽しめたらなという、ごく純粋な願いを込めて言ってくれる人もいて、それはそれでとても光栄だし嬉しいし励みにもなる。

素晴らしい作り手の手から生まれた素晴らしいコーヒーを、一人でも多くの人に体験してもらいたいと思う気持ちはずっと変わらないし、確かにもっと人が多いところでやれば広がるペースも早いのかもしれない。

 

けれど僕は日本の西の端・長崎にいる。

お店がある時津町は人口が3万人。渋谷のスクランブル交差点が10回も変われば全員が入れ替わってしまうほどの小さな街。

そんな場所でカリオモンズコーヒーは8年目を迎えている。

 

田舎だからできないとか、都会だから叶うとか、よく聞く台詞だけれどそんな言い訳は一切言いたくない。

良い人材が全て都会に出てしまうかというとそういうわけでもなくて、今のカリオモンズコーヒーのスタッフは全員が地元の出身だ。それでも経営者としてスタッフについてお褒めに与る機会も多い。僕自身もスタッフのことが大好きだし、将来的にそれぞれのキャリアにつながるたくさんの経験がこの場所でできればと常々考えている。

 

要は場所ではなくて環境なのだ。

そして環境がなければ作れば良いだけの話なのだと、この8年間で僕は体験し、学んだ。

 

悔しいけれど、売る意味でのビジネスとしては、田舎は確かに不利な条件だとは思う。

しかし、足をついたその土地で何を考えどう動き、どのようにして良い環境を作り出していくか、それこそがイノベーションだと僕は考える。

 

憧れを求めて都会に赴く時代はとうに終わった。

これからはそれぞれの地でどう在るか、この長崎にも確実にその波は押し寄せている。

 

 

2016年11月16日
イトログ

 

『More than just a coffee.』

 

コーヒーを飲むことは “体験” だと、僕は思っている。

美味しさはもちろんのこと、その一杯を通してさまざまな体験を与えることがコーヒーにはできる。

一杯のコーヒーが、時に一人の人生を変えてしまうこともあるほどで(僕もその一人)、つまりコーヒーを飲むということはそれほどの感動と体験を与えうる行為なのだ。

 

カリオモンズコーヒーで働く人の中には、僕と同じような体験を経てコーヒーの世界に飛び込んできた人もいる。

多くの場合、その体験から沸いた情熱は内向的で、『自分も美味しいコーヒーを淹れたい!』という自分自身を充足させるための興味であることがほとんどだ。

ただ、僕らは日々、お店のエプロンをつけてカウンターの中で働いている。

それは紛れもなくカウンターの先に立つお客様のためであって、自分自身の情熱を満たすためではない。

『美味しいコーヒーを淹れたい!』という情熱を持ってチームに加わったスタッフたちに与えられる最初の大きな試練がこれだ。

自分自身を満たすためではなく、海の向こうで働くコーヒー農家やカウンターの先に立つお客様を満たすことが僕たちの仕事であることを自覚しなければならない。

 

個人ではなく組織としてコーヒーに関わるようになって、その内向的な情熱を外向きに変えることが僕の立場からの最も大きな仕事のひとつだと、そう感じている。

 

美味しいコーヒーを目指す情熱の元で得た経験や技術を他の人のために使い、ひとりひとりに、そして社会に貢献していくこと。

それが達成されたときに得られる感情こそが、『美味しいコーヒーを淹れたい!』という情熱を満たすたったひとつの手段なのだ。

 

 

一杯のコーヒーにとどまらない体験が、飲む人を、そして淹れる人を満たす。

そうやって想いは巡り、行動となり、コーヒー生産者から消費者までを本当の意味で豊かにしていく。

 

全ては一杯のコーヒーを飲む”体験”からはじまるのだ。

 

 

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