イトログ_021
2020年2月13日
イトログ

 

『あの店から教わったこと』

 

2020131日、カリオモンズコーヒー大村店が閉店した。

春に長崎市内に移転することを決めたのが一番の大きな理由だが、実はその以前からこれからの大村店についてチーム内で議論することが何度かあった。

 

僕たちが大村店をオープンしたのが2016年の8月。

大村への出店を決意した理由は『今の店舗でカバーできない市場(お客さん)を得よう』というものだった。大村市は時津店から海を挟んで対岸側。時津まで味を運んでくださるお客さんもいくらかおられたがみんな口を揃えて「遠いね」と仰った。

 

そのうちにふと舞い込んできた大村への切符。市場開拓の目論見があった僕たちは意を決して新市場に踏み込んだのだ。

ランニングコストや損益分岐点をはじめ、さまざまな試算をおこなって出た勝算。読み通り、大村店は開業以来ひと月も数字上の赤字を出さなかった。外からやってきた僕たちをあたたかく迎えてくださった大村の人たちに支えてもらったこともありがたかった。

 

ここまで読んだら順風満帆に見える大村店。ただひとつ、僕たちにとって引っかかっていたことがある。

 

それは『住んでいない』ということ。

 

長崎や時津から毎日通っていた僕たちはお店を開けるために大村に行き、お店を閉めたら長崎に帰るという毎日を過ごしていた。大村の街で商いをおこなっていながら、その利益を大村で使う(=還元する)ことを満足にできなかった。

どの地方にもあることだが、どこからともなくやってきたネームバリューのある大型店に人が押し寄せ、その傍らで人知れず小商いが去っていく姿をこの10年間たくさん見てきた。

 

はたして僕らの姿はそれと同じことではないのだろうか。そんな不安が儲かれば儲かるほど大きくなる。人はやはり人からモノを買う。人にお金を払う。でも僕らは大村でそれをやることはできない。住んでいないからだ。

そういった不安を抱きつつも良い解決策を見いだせないまま続いていた大村店の営業。遅かれ早かれタイミングが来たら一旦終わりにしようという思いは実は早いうちからあったのだ。

 

そしてやってきたそのタイミング。デモッソノットキーノさんの閉店とその跡地活用の打診。それに大村店を引き継ぎたいという申し出。ふたつの条件がピタリと合わさるように僕らの元に舞い込んできた。今しかない。これから自分たちに起こる大きな動きや大村店への愛着に躊躇しつつも僕たちはそのタイミングを掴むことにした。

 

昔、人前で話す機会があったときにこう言ったことを覚えている。

 

「儲かることは実はさほど難しくないと思う」

 

その時は少し嫌味に響いた様子だったが、僕が言いたかったことはこの3年半で自分自身が体験したそのひとつの結論そのものだ。

夢とビジネスと役割。そのバランスが崩れたとき、おこないはどうやら意味を成さなくなるらしい。あるいは続かないか。

 

自分たちの好きなことをやって、ちゃんと生活が成り立って、社会からも必要とされる存在になる。とても難しそうに思えるが、実は仕事の本質そのもののようなものだ。行き過ぎた自己表現でもなければ商売っ気丸出しの媚びたビジネスでもなく、後ろ指を指されるような浮いた存在にもならない(もちろん多少のエッジは必要だと思うが)。

それらが調和したときはじめて、おこないはひとつの形を成すのではないだろうか。

 

大村店があったその期間、体験としてそのことを学び、今回の結果に結びついた。僕たちが求めていたのは、広げた手に収まる以上の市場や還元しきれない利益ではなく、自分たちが営むコミュニティに還元していく影響と仕事や日々に対するよろこびだ。

この3年半は僕たちにとってとても学びの多い日々だったと思う。これからのカリオモンズコーヒーが目指す方向性がよりはっきりと示されることにもつながった。

 

「幕を降ろすというより、錨を上げるようだ」

 

そう仰ってくださった人がいた。

僕たちの船は次のステージへ。そしてまたいつか、一回り大きくなって大村の街へ帰ってこれるよう今は自分たちの航海に集中したい。

 

 


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『すべてのコーヒーが持つ物語』を伝えたい。 カリオモンズコーヒーで取り扱うコーヒー豆のほとんどは、生産国のコーヒー農家から直接買い付けてきたコーヒー豆です。毎年自分たちで生産国のコーヒー農園を訪ね、情熱ある素晴らしい生産者たちから継続的にコーヒー豆を買い付けています。 生産者から消費者まで、私たちが取り扱うコーヒー豆に関わっているすべての人が豊かであるように、その背景までを伝え繋いでいくことが私たちの使命です。
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